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風力発電

風力発電(ふうりょくはつでん)は、風の力(風力)によって発電機を回して発電する方式である。

風力エネルギーは、再生可能エネルギーのひとつである。地球環境の保全、エネルギーセキュリティの確保、経済成長の維持を同時に実現可能なエネルギー源として、世界各地で普及が進んでいる。


風力発電所(竜飛ウィンドファーム)
ダリウス型風力発電機目次 [非表示]

特徴
風力発電は従来の集中型電源とは様々な点で異なる特徴を持つ。温室効果ガスの排出が少ないことと、将来にわたって発電用燃料の調達リスク(コスト)が無いことが最大の長所であるが、その他の長所も無視できない効果を持つ。一方、出力が変動するなどの欠点も有し、対策を要する場合もある。以下に長所と短所を列挙する。

長所
主に小規模分散型電源としてのメリットと、燃料を必要としないこと、全体的な環境への好影響がある。

二酸化炭素などの温室効果ガス排出量の低減効果がある。
再生可能エネルギーを用いた発電方法の中では比較的発電コストが低く、事業化が比較的容易である。
太陽光発電と異なり、夜間でも発電が可能である。
エネルギー自給率の向上が見込める。
離島など、燃料源の確保や送電コストの高い地域にて独立電源として活用できる。
小型のものは需要地に隣接して設置可能であり、送電コストの低減に役立つ場合がある。
個々の設備が比較的小規模で、規模によっては個人でも運用可能である。
冷却水を必要としない。
小規模分散型の電源であるため、事故や災害など有事の際の影響を最小限に抑え、全体の稼働可能率を非常に高くできる。
工期が短く、需要総量の変動に対応しやすい。また投資してから運転開始までの利子も少なく済む。
運転用燃料を必要としないため、物価変動要因(インフレなど)の事業リスクが少ない。
修理や点検が比較的容易であり、必要な時間も短くできる。
短所
主に出力電力の不安定・不確実性と、周辺の環境への悪影響の問題がある。特に設置場所の選定に注意を要する。

風速の変動に伴って、出力の電圧や力率が需要と関係なく変動する。特に個々の風車で見ると変動は激しい(ただし多くの風車がまとまると緩和される)。出力変動を参照。
夜間も発電するため、他電源の出力や需要の状況によっては夜間の余剰電力を増大させる。
現時点では既存の発電方式よりコストが高めである(ただし温暖化ガス排出量の差を考慮したコストは低いとされる)。
風力原動機を設置する場所の風況が事業の採算性に大きく影響する。
ブレードに鳥が巻き込まれて死傷する場合がある。鳥への影響を参照。
周囲に騒音被害を与える場合がある。
想定値以上の強度の落雷や強風などにより、破損する場合がある。

資源量
風力発電の資源量は大きく、開発可能な量だけで人類の電力需要を充分に賄えるとされる。日本でも軽視できない量が開発可能であると推定されている。

世界全体では少なくとも約72TW(テラワット)が風力によって発電可能とされる。これは世界全体の電力需要量(14TW)の約5倍に相当する。日本では風況が悪く風力発電に向かないという意見が存在したが、これは都市部に多い気象庁の観測点のデータで判断したためと言われている。実際には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による風況調査などで設置有望地域が多く存在する可能性が示されている。現時点での調査結果からは、日本の陸上で発電可能な量は日本の総発電量の7〜10%と言われている。この計算結果は風車の高さの設定に大きく影響される。小型の高さ40mの風車では風が弱いために2〜3%程度となるが、最近の大型の風車を仮定し、高さ100mの風車で計算した場合では数倍になる(牛山など)。さらに洋上(オフショア)発電まで考慮すれば、潜在的には20〜30%程度まで可能という指摘もある。


風力発電所

風車の型式

ジャイロミル型発電機
(北海道稚内市)電力用としては水平軸のプロペラ型が多く用いられるが、用途に応じて垂直軸のダリウス型、ジャイロミル型、サボニウス型またはその併用型を用いる場合もある。風力原動機も参照。また直線翼垂直軸型[1]、スクリューマグナス風車(マグナス効果を利用)もある。


規模と効率
風力原動機はロータ径が大型化するにつれて効率が向上し、採算性も向上する。これは地上付近では地面や障害物等による摩擦があり、高所の方がより効率よく風を捉えられるのが大きな理由である。このため発電事業用の風力原動機は大型化する傾向にある。

発電量はローターの直径の2乗、風速の3乗に比例する。効率は最高59%である(ベッツの法則)[2]。1919年、ドイツのアルバート・ベッツにより導き出された。

2005年現在では、世界的に2.5MWクラスが中心であり、5MWクラスの開発が進められている。

日本メーカーでは1MWクラスが主流であったが、近年、2〜2.4MWクラスのものが商品化された。また、家庭への普及を狙って小規模の風力原動機を商品開拓する動きもある[3]。


工期

風力発電機の設置工事風力発電機の設置工事に必要な期間(工期)は、規模や環境にもよるが、概して短い。1基では通常3〜4ヶ月とされる[4]。20基程度では10〜11ヶ月、50〜100基程度の大規模なウインドファームでも1〜2年ほどの例がある。デンマークの沖合6-15kmに2MW基を80基、合計160MWを建設した実例では、実際のサイトでの建設作業は約半年、製造から含めても約1年半で済んでいる[5]。これは大規模集中型発電所(原子力や地熱など)に比べると格段に短い。これは需要構造の変化への対応や機器の更新を容易にする他、工事期間中の利子も低く抑える効果がある。例えば、下記のような利益が得られる。

集中型発電所では工期が長い分、将来の需要増加の可能性を見越して常に多めに設備を建設しておく必要があり、また一基当たりの容量が大きい分、見込み違いによる無駄も多くなりやすい。しかし風力のような小規模分散型電源を用いる場合は、比較的短期かつ小さい単位での増設や移設が可能である。特に複数の異なる分散発電方式を併用した場合、需要状況によりきめ細かく対応し、集中型発電所の欠点を補うことが可能である。
定期メンテナンスや修理に要する期間が短い(さらに多くの場合、個々の設備ごとに時期をずらして行うことが可能である)ため、系全体の稼働可能率をその分高くできる。
大規模な風力発電所(ウインドファーム;WF)では、WFを複数の工区に分けて順番に建設・稼働開始させ、意図的に将来の機器の更新時期をずらす場合がある。これによって機器の更新時期でもWFの大部分は稼働を続けることができ、需要の変化などによる財務リスクも抑制できる。また風力発電機は現在でも活発に技術開発が行われており、毎年のように性能が向上した機種が登場している。このためWFを段階的に建設することで、後で着工・稼働開始する工区になるほど、より高性能の機種を導入できるメリットもある[6]。

導入規模の影響

小型風力発電機の例
街路灯の頂点に設置し太陽光発電と併用される。風力発電は典型的な小規模分散電源であり、導入規模が増すほど全体的な信頼性と安定性が高まり、発電コストも低減する。

風力発電設備は普及クラスのものであれば、稼働可能率自体は非常に高くすることが可能であり、稼働可能率95%以上の例も多数報告されている。これは一般にメンテナンス等に要する時間が短いことによる。たとえ個々の風車の稼働可能率が低くても、導入数が増えるに従って、全体でみた信頼性は急速に増す。
風力発電設備が稼働不可になる要因としては、落雷、故障、定期保守、系統の故障、などがある。英国における一例では、それぞれ原因の48%、37%、13%、2%を占めたと報告されている。風力は変動するため、個々の風車の稼働率は通常40%以下となる。
異なる場所に分散して設置された風車同士は、距離が離れるに従って、出力変動の相関性が低くなる。特に速い(高い周波数の)変動においてこの傾向は顕著となり、その分、合計の出力は平滑される。このため出力の平準化には、分散配置が有効である。
大規模化と分散配置により、大きな変動は残るものの、全体でみた変化の速度が遅くなり、電力網によるサポートがより容易となる。オランダ内の海岸沿いの6地域でを対象とした調査では、数時間程度の間隔で出力に大きな変動が見られるが、100万kW規模の変動が起こる確率は、その規模の火力発電設備が強制停止される頻度と同程度であると報告されている(ロビンスなど)。
小規模な導入量では、出力変動への対策コストは必要以上に高く算出される[7]。
系統連系する際に許容できる導入量の見積もりは、シミュレーションの前提条件の小さな違いで大きく異なる結果となる。このため変動の許容量を必要以上に小さく見積もっている例も散見される[8]。

寿命
大型機における原動機部分の寿命は通常20年程度[9][10]とされる(機種や条件によっては30年とする場合もある)。設計寿命は主に耐久性とコストのバランスで決定される。基礎部分の寿命は50年程度で設計し、2世代に亘って利用することが可能である。なお日本では減価償却資産の耐用年数が17年[11]とされることからこれを寿命の代わりに用いて計算する場合があるが、その分発電コストを5%程度高く見積もることになる。

寿命を迎えた原動機については、集中型発電所に比べ、更新で一度に止める風車の数が少なく工期も短いため、発電所全体の稼働状況に与える影響は少ない。また風力発電技術は現在も改良が続いているため、より高性能な機種へ更新して競争力を高めたり、需要構造等の変化へ対応する観点からは、更新サイクルがある程度短い方がメリットがある。


温室効果ガス排出量
風力発電の発電量当たりの温室効果ガス(GEG)排出量は小さく、日本では100kWのシステムにおいて約25.9g-CO2/kWhなどの計算例がある(g-CO2/kWhはライフサイクル中に排出される温室効果ガス(GEG)を二酸化炭素(CO2)に換算し、発電量あたりに直した値)。この値は設置地点毎の風況や風車の性能に左右される。近年の大型で高性能な風車ならば、10g-CO2/kWhを切る場合もあるとされる[12]。設置効果は750kW機1基が500エーカー(約2平方km)の森林に相当するとも言われる[13]。

日本の電力の平均GEG排出量は 約346g-CO2/kWh(発受電端、2001年)と計算されている。例えば寿命20年でGEG排出量が25g-CO2/kWhの場合、CO2ペイバックタイム(CO2的に「元が取れる」までの利用期間、CO2PT)は 20×(25/346)=1.45年 となる。10g-CO2/kWhならば約7ヶ月である。


エネルギー収支とEPT
「生産から設置・運用〜廃棄に至るまでのライフサイクル中に投入するエネルギー」を「風力により生み出すエネルギーにより取り戻す」までの時間をEnergy Payback Time(EPT)、また寿命との比をエネルギー収支(Energy Payback Ratio(EPR))という。原動機の性能および設置場所の風況に大きく左右されるが、通常EPTは数ヶ月程度[14][15]とされる。これより、寿命を20年としてエネルギー収支は20以上と計算できる。大型化などの技術改良のほか、リサイクルや基礎部の再利用等によって今後も改善が見込まれている。


コスト
風力発電は、新エネルギーの中で最も採算性が高いとされる。このため欧米では早くから積極的な導入が進められ、事業性については実証済みである。大規模に導入されているデンマークにおいては、風力発電のコストは過去20年間で80%以上削減され、今後10年間のうちに通常電力と競争可能なレベルまで低下する見込みである[16]。温暖化対策コストまで考慮すると、欧州における風力は石炭火力より発電コストが一桁少ないとされる[17]。 日本における単純な(温暖化対策などのコストを含めない)総発電量あたりのコストは平成13年の時点で10〜24円/kWhとされ、国内でも条件さえ良ければ実用水準に達する。平成8年の時点で、100kWの小型機ながら9-12円/kWhを達成した例(山形風力発電所[18]:現在のたちかわ風力発電研究所[19])などが報告されている。 2015年度に日本一の風力発電施設となる見通しの風力発電を手がける中部電力の子会社「シーテック」と伊賀、津両市出資の第3セクター「青山高原ウインドファーム」の発表によれば、40基で計8万kWの発電能力を有する風力発電用風車と変電所の建設総費用は、約200億円と見込まれている。


風力発電の状況

世界

世界の風力発電の導入量と予測(1997-2010年)[20]事業化が比較的容易であるため、世界的に大規模な実用化が進んでいる。 2006年末時点での設備容量は、世界全体で約74,223MW(=7,422万kW=約74GW)である。これは2005年から約25%増加している。国別に見ると、ドイツ (20GW) が世界の約28%を占め、スペイン (12GW)、米国 (11GW)、インド (6GW) などが多くなっている。2010年には2006年時点の倍以上、150〜160GW が導入されると見込まれている[21]。

2006年の新規導入量では、米国が最も多い2,454MWを追加し、以下ドイツ (+2,233MW)、インド(1,840MW)、スペイン (+1,587MW)、中国 (1,347MW)と続いている。欧州は2010年に定めていた4,000万kW (40,000MW) の導入目標を既に突破しており、このペースならば2010年には京都議定書で定められた温室効果ガス排出削減量の3分の1を風力発電だけで達成できると言われている。またインドや中国など、欧米以外の国の台頭が目立っている[22]。

市場のシェアは2005年時点でデンマークのVestas社が市場の約3分の1のシェアを有し、以下スペインのGamesa社 (17%)、ドイツのEnercon社 (15%)、米国のGE社 (11%) と続く。日本企業では三菱重工業の約2%が最大である[23]。


欧州
2006年の欧州での導入量は2005年に比べ約19%増加し、48027MWに達した。設備全体による年間発電量は約100TWhに達する見込みである。これは2005年のEU全体の電力消費量の3%に相当する。2020年にはEUの全電力需要の13%を風力だけで賄える見込みである[24]。 政策的には、殆どの国がフィードインタリフ制と呼ばれる制度を軸として普及を進めている(再生エネルギーの項を参照)。 普及の最も進んでいるデンマークでは既に国全体の電力の2割が風力発電によって賄われ、なおも普及を進めており、2025年には5割以上に増やせるとしている[25]。


日本

開発・普及状況
日本では欧米諸国に比して普及が進んでいない。日本国内での風力発電(出力10kW以上)の累計導入量は2006年3月時点で1050基、総設備容量は約108万kWであり[26]、発電量は標準的な原発(100万kW前後)の数分の1である。1基あたりの出力を見ると、2005年度では1MW以下の機種が中心であり、より効率の良い1.5〜2MW以上の出力のものの基数はまだ限られている。風力発電設備の大部分は輸入品であり、2005年度では導入基数ベースでほぼ4分の3を占めている。ただしここ数年は国産機の割合が増える傾向にある。また海外機の独擅場であった2MW以上の大型機についても、国産機の開発が進んでいる[27]。


布引高原パノラマ画像。33機の風車が確認できる。(2007年04月)
[編集] 政策・導入目標量
2001年6月に経済産業省の調査会がとりまとめた「新エネルギー部会報告書」では、2010年度の導入設備容量目標を300万kWと定めた。環境省においてもこれにならい、2002年3月発表の「地球温暖化推進大綱」において2010年度までの目標を300万kWとした。現状の政策では達成が難しく、各種の規制の見直しや、水深の深い場所にも設置できる浮体式洋上風力発電の技術開発を急ぐべきとの意見も出されている。また、RPS法の導入目標数値の増大も検討されている。

日本国内の大型風力発電機メーカーには内外での需要増加に対応して増産し、輸出も積極的に行う例が見られる[28]。業界団体では、2020年には760万kW(うち洋上は140万kW)、2030年には1180万kW(うち洋上は560万kW)が導入可能としている[29]。また、今後の技術開発をより積極的に取り入れた値としては、2030年に2000万kW(陸上700万kW、洋上1300万kW)の目標が検討されている[30]。


政策的課題
日本の現行制度(RPS法)は、電力会社に一定比率での導入を義務付ける方式であり、固定枠(quotaまたはgreen certificate trading)制に分類される。この方式は導入初期には一定の効果を示すが、これまでの各国での実績より、発電事業者側のリスクが高く、実質的な発電コストの削減効果も低いなど様々な欠点が指摘されている[31][32]。このため風況が良いとされるイギリスなどでも普及が進まず、コストも高止まりするなど、結果的に初期の目的を達成できていない[33]。また、日本の現行制度下では電力会社は既存の電源を優先して導入に消極的な姿勢も見せており[34]、事業者の参入機会が電力会社が設定した枠や不定期な入札によって制限される例も見られる。

これに対し、固定価格(minimum price または feed-in tariff)制と呼ばれる方式では電力会社に電力の買い取りを義務付けるほか、購入価格をも法的に保証することによって発電事業者の負うリスクを減らす。市場原理に従って導入量を早期に拡大する一方で、後になって設置した事業者ほど購入価格を逓減させることで総コストを調整し、また機器製造事業者間での競争を促す。これまでの実績から、他方式に対して導入促進とコスト削減効果が高いとされ[35]、現在では欧州の多くの国々が採用している[36]。このため日本でもその導入を求める意見が出されている[37]。


技術的課題と対策
現在の風力発電には下記のような技術的課題が存在し、性能や安全性の向上を狙った開発競争の焦点となっている。従来問題点とされてきた点の多くは実用上問題ない水準まで改良が進んでおり、今後も改善が見込まれている(ロビンスなど)。近年は日本の企業や研究機関による日本の環境に適した風車の開発も活発に行われている。


出力変動
風力発電の出力は昼夜問わず不随意に変動するため、需要への追従は基本的に他の調整力に富んだ電源(火力発電、貯水式水力発電など)に頼ることになる。ただし実用上支障が無い程度まで、出力の平滑化や負荷追従を行うことは可能である。


短時間の変動
風力発電は風速の変動に従って出力が需要と無関係に変動し、電圧や力率の変動をもたらす。この変動は一般に太陽光発電に比べても大きい。特に導入量が小規模の場合は高い周波数成分を含む変動が多くなる。しかし大規模に導入した場合、変動は大幅に緩和され、系統側の負担が小さくなる(導入規模の影響を参照)。実際、デンマーク、ドイツ北部、スペインなどにおいて、信頼性を犠牲にせずに電力供給量の20-40%を風力で賄えることが実証されている。また既存の系統に風力発電を追加する場合、新たなバックアップ電源を付加する必要は無いとされる[38]。ただし系統容量に占める風力発電の割合が大きい場合は、ある程度の蓄電設備を加えることで系統全体で見た発電コストを低減できる場合もあるとされ、検討や実験が進められている[39]。

個々の風車やWF単位で出力を平滑化するには、下記のような対策が有効である。

大型のブレード自体の慣性力を利用する。風の強い時に回転数を動的に上げて運動エネルギーを蓄え、風が弱くなった時に利用することで、発電機の出力を平滑化する。
一部の風車を調整力としてリザーブし、適宜解列などを行うことでWF全体の出力を平滑化する。
電力を一時的に蓄電池に貯蔵する。
系統連系部(インバータなど)に力率の調整能力を付与する。
フライホイールによる慣性回転や油圧・ガス圧・空気圧(圧縮空気)による蓄圧によってエネルギーを貯蔵する。例えば圧縮空気を用いた研究例では、15%のコストの追加で稼働率を34%から93%に引き上げられるという報告がある[40]。
この他、風力発電で得られた電力から水素を製造する手法も研究されている[41]。


長時間の変動
風力発電の導入価値は、風の強い時間帯(季節)と電力需要の多い時間帯(季節)が重なる場合に相対的に大きくなる。一般には、夜間や冬期の暖房需要の多い場合には他の電源に比較して特に導入価値が高くなる。マッチしない場合(他電源による夜間電力が既に余っている場合など)にはその分価値が低くなる。ただし他電源に比較すると、運転状態を保つために燃料を投入する必要が無い分、無駄は少ない。


強風
風力発電機の最大の敵は強すぎる風である。風力発電機には定格風速があり、定格を大幅に超える速度で運転すると原動機の焼損やブレードの破損などを招く場合がある。そのため風速が過大な場合は、保護のために速度を抑制するか、場合によっては一時的に発電を停止する。

ヨーロッパやアメリカなどで使用されている風力発電は、その地域的な特徴(高緯度、内陸)から、台風、サイクロンなどの暴風雨の影響を受けない。
インドなど中緯度以下の地域では、暴風雨にさらされることがある。たとえば、2003年9月11日の台風では、宮古島にあった7基の風力発電機を壊滅させた。これは最大瞬間風速が74.1m/sに達し、設計予想値を越えたためである。
日本での風力発電は、風が強い山間地に作ることがあるが、山間地の風は風向の変動が大きいため、風力発電のブレードに対して予想以上の負荷をかけ、それが故障の原因になることもある。
このような強風や変動に対しては、下記のような対策が用いられる。

ブレードの角度(ピッチ)を変えて速度を抑制する(フェザーリング)
ブレードまたは風力原動機全体を風に対して傾ける
風車と発電機を一時的に切り離す
設備全体(ポールなど)を物理的に強化する
騒音対策を施した上で、ダウンウインド型を採用する[42]。もしくは、強風時のみ風下にブレードを向ける[43]。
強風に耐えうる型式の風力原動機を採用する
設置地域の風況の事前調査の強化

落雷
落雷による故障は風力発電が停止する大きな原因の1つである。ブレードへの落雷により、ブレードが物理的に破壊される場合が多い。大型機ほど地上高が高くなるため、被雷しやすくなる。日本では、冬季の日本海側にて被害が大きい。これは日本海側の冬の雷が、エネルギー換算で、夏の雷の100倍にも達するほど強いためである。このため1MW機が実用化されるにあたり、設計変更と交換のために半年の期間を要した例もある。近年は日本のメーカーにより、このような強力な雷に対応した機種が開発されている。台風対策と相まって、セールスポイントになる例も見られるようになった[44]。

雷に対しては、原動機本体に避雷針を設置する、ブレードに導電性を付与する[45]、ブレードの強度を増すなどの破壊対策の他、通信ケーブルの光ケーブル化や制御回路などへのアレスター装備など、制御部分への対策も行われる。また設置地域の落雷頻度を把握するには気象庁の年間雷雨日数分布図や電力中央研究所の雷撃頻度マップが利用できる。近年は雷の観測・予報を専門とする企業も存在する。


騒音
風力発電機の騒音(風切り音)は一時期問題とされたが、近年は大きく改善され、通常は問題にならない水準に達している。大きな改善点の1つが、ブレードの翼断面の改良である。昔の風車では航空機用の翼断面を用いていたため、翼端周速が100〜120m/sに達し、騒音を大きくする要因となっていた。この翼端周速は風車専用の翼断面(厚翼)を用いることで大幅に低下し、現在は大型機でも60m/s程度となっている。さらに、多極式発電機の採用によるギアレス化(ギアノイズを排除)、ダウンウインド型からアップウインド型への移行(タワー下流の乱れた気流を横切る音を排除)などの対策により、騒音は200m〜300m程度離れれば周囲の風音と区別がつかない水準(または「冷蔵庫程度の騒音」)にまで減少する[46]。


用地確保
風力発電機を2機以上設置する場合には、卓越風向に対して垂直方向に風車直径の3倍、平行方向に10倍程度の距離が必要である。ただし風車そのものが占有する面積は小さいため、畑や牧草地など、高さ方向の余裕を必要としない場所に設置すれば土地の確保の問題は小さくなる。また近年は洋上発電も実用化されつつある。


発電量予測
風力発電の事業化にあたっては、事前の風況の調査が重要である。風は不随意に変動するが、その変動量や変動速度、平均強度などは確率的に取り扱うことが可能である。風力発電の発電量もまた、確率的に取り扱うことができる。このため事前にある程度の量のデータを集めておくことにより、相応の確度で風況や発電量の予測を行うことができる。

日本ではNEDO等による風況調査の実施や予測技術の開発、実績データの蓄積により、事前にある程度の予測が可能になっている。また実際に設置するにあたっては、測定用風車を用いた実測や、周辺地形に基づいたシミュレーションも利用される。年間総発電量の年ごとのばらつきは、10〜15年間に亘る調査により±2〜10%程度と報告されており、風況調査を充分に行えば、長期間でみた風況由来のリスクは事業上問題にならないことが多い(清水、飯田など)。

逆に風況調査に不備のある場合、当初見込みよりも発電量が少なく、赤字となる場合がある。有名な例ではつくば市が小学校などに設置した風車の発電量が予測より大幅に少なくなったケースがある。これは事前の風況予測が甘かったのが原因であり、訴訟に発展した[47]。また、環境省からの交付金1億8500万円の返還[48]を余儀なくされた。

発電量が予測を下回ったなどの事情で、その場での稼働継続に値しない状況になった場合、地中に打ち込んだ[49]部分の移動は難しいが、上部の風力原動機は基本的に移設や転売が可能である。


社会的課題

鳥への影響

Lattis構造のタワーが林立する古いウインドファーム(カリフォルニア、Tehachapi Mountains)。横桁に留まろうとして鳥類が誘引され、被害に遭う。
現在一般的な円柱状タワーを用いた風力発電所(オトンルイ風力発電所)イヌワシ、クマタカ、オオタカなどの希少猛禽類の幼鳥が、風力発電のブレード(回転羽根)に衝突(バードストライク)して死亡するケースがある。衝突死の多くは鳥が風車の回転範囲を通り抜けようとして、回転翼を避けずに体が切断されることにより生じる。一説にはモーションスミア現象によって高速の羽根が見えず、反対側の景色が透けて見えるため鳥が気づかないためといわれている。鳥類の目は人間に比べモーションスミアが起こりやすいという実験結果が出ている。鳥類は生息地の喪失、繁殖の妨害、採餌地の喪失、などの影響も受けているが、バードストライクは鳥の大群が通るルートの地域で多数発生していることがわかっている。設置する場所や形態の選定さえ適切ならば、通常の送電線以下の危険性しか及ぼさないとの報告もある(クローネ (Krone) 他)[50]。米国での年間平均バードストライク数は大型風車1基につき2.19羽(2001年)ドイツでは同0.5羽である(すべて狐などによる死骸持ち去り数を調整済み)。米国でのバードストライク総数は年間約10億羽であるが、風車によるものは0.01%であり、窓ガラスなどに比べてきわめて低い数字であるといえる。また英国王立鳥類保護協会も、「適切に設置された風力発電所は、鳥類に大きな脅威を及ぼさないと考える」と表明している[51]。スペインの影響調査では風車設置場所を飛行する鳥類の死亡率は0.1〜0.2%と報告されている。しかし、日本では風力発電は環境影響評価法(環境アセスメント法)の適用外であるため、事前の調査も事業者の自主努力に頼っている状態であり、不十分な環境影響評価も多い。そのため都道府県によっては独自の条例により環境基準を設けているところもある(バードストライクの項を参照)。

技術的には、下記のような対策が考慮される。

予め設置地域の鳥類の生息状況を調べ、影響の少ない設置場所や形式を選定する。
渡り鳥の接近をレーダーによって探知し、事前に回転翼を止めておく。
風車付近での猛禽類の採餌行為を無くすため、周囲にテープや案山子を配置する[52]。
同じ発電量でも、ブレードの回転速度が遅くなるように設計する(翼断面や発電機によって決まる。騒音の項を参照)
タワー(支柱)に鳥が留まらないよう、横桁や出っ張りをなくした円柱状の設計とする。
視認しやすい白色で塗装する。但し、目立たない色に塗装するという景観への配慮と矛盾する可能性がある。
フラッシュ光により警戒を促す。但し、景観問題への配慮が必要となる。

景観
風力発電機の設置に当たっては、自然景観への影響が問題になる場合もある。例えば風光明媚な観光地などでは、風力発電機の設置によって景観が変わるために反対される場合もある。一方、せと風の丘パークのように、大型風車が林立する雄大な光景を新たな観光資源とする動きもある。この他にも、北海道幌延町の風力発電所(28基設置)は北海道をツーリングする若者に人気があり、若者を中心に観光資源としての認識が増えつつある。

また環境省は風力発電を積極的に推進すべきものと位置付ける一方、自然公園への立地に関しては風力発電施設設置のあり方に関する検討会[53]を設けるなどして審査基準の検討を行い、現時点では予防的立場から概して慎重な姿勢を取っている。これに関してはパブリックコメントなどで規制緩和を求める意見も多く寄せられるなど、諸外国同様、議論の余地を常に残している。公的な設置基準としては、平成16年春に自然公園法施行規則が一部改正され、同年4月1日より施行されている[54]。

米国と英国でのウインドファーム建設直後と1年後の周辺住民への意識調査ではいずれも、2回目が景観と騒音での反対が少なくなっている[52]。


電波障害
風力発電の風車が立てられ始めた頃から、電波障害への懸念が相当数存在していたが実際にはそれほどの苦情は発生していない。電波障害となる要因には遮蔽障害と反射障害が考えられ、それぞれが回転翼部分と静止しているタワーとその先端のナセル部分が影響する可能性がある。21世紀現在の回転翼は全て繊維強化樹脂製であり電波に対して有意な影響を与えないと考えられるため、TV送信塔と住宅との間に設置しない事やナセル筐体の反射を低減する等のナセルとタワーの影響を事前に確認することで解決できる。また、ナセル内の発電機や付随する電力機器類からの電波ノイズの防止と遮蔽も考慮されなければならない[52]。


その他の問題

用地・道路造成
周辺地域と比較して高所に設置する場合には、立地点の整備や資材運搬、運用時のメンテナンスのために林道を造成する必要があり、それに伴う樹木の伐採が問題視される場合がある。


洋上風力発電

洋上風力発電所(デンマーク、コペンハーゲン付近)海上に風力発電機を設置することを洋上風力発電(オフショア風力発電、海上風力発電、海洋風力発電)と呼ぶ。地形や建物による影響が少なく、より安定した風力発電が可能となる。また立地確保、景観、騒音の問題も緩和できる。 水深が浅い海域において海底に基礎を建て、大規模なウインドファームを建設する例が各国で見られる[55][56]。水深が深い場所のために、独立行政法人海上技術安全研究所やアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッドなどでは浮体式の基礎を用いる方式も研究している。なお、沖合いでの洋上風力発電(沖合風力発電)については、電力の陸上への送電が困難であるため、発電した電気で水素を製造し、これを圧縮したり、有機ハイドライドに吸着させる等により輸送することが研究されており、これにより電力変動の問題も解決されることが期待されている。また、科学技術政策研究所では、平成14年3月に「深海洋上風力発電を利用するメタノール製造に関する提案」を発表しており、沖ノ鳥島周辺、三陸沖太平洋、北海道北西沖日本海などを有望海域として、日本の全エネルギー需要を賄えるほどの大規模なシステムなどを提唱し、その経済性等の試算を行い、実用化が可能であるとしている。





その他

風車の地図記号2006年1月に地図記号の1つとして風力発電所が追加された。


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